「みなし労働時間制の導入そして運用」

「みなし労働時間制の導入そして運用」

私は社会保険労務士でもあり、健全な労使関係の構築に資する記事をご提供できればと考えております。

今回は最近のニュースでも話題の阪急トラベルサポート事件判決を踏まえた、「みなし労働時間制」の導入と運用について述べさせて下さい。…

阪急トラベルサポート裁判で問題になった「みなし労働時間制」を導入・運用するためには企業はどのような点について留意しなければならないのでしょうか?

まず、導入に際しては単に「添乗員や営業職員は営業所の外で労働するのだから、当該労働者にはみなし労働を適用できるはずだ。」と思ったら大間違いです。

朝営業所に出勤し、帰りに営業所に戻り業務報告などをおこなうようでしたら、みなし労働を適用することはできません。なぜなら始業・終業時間を会社が「管理」できるからです。

みなし労働を適用するには、対象労働者の直行・直帰が原則となります。

さらには労働時間を「みなす」訳ですから、業務遂行に際して”通常”必要とされる時間をみなし労働時間としなければなりません。”通常”必要な時間が1日8時間(法定労働時間)を超えるようでしたら、当然割増賃金の支払いも必要ですし、労使協定を締結して労基署への届出も必要となります。

もちろん就業規則にはみなし労働時間制を採用している旨を定めて、ようやく導入することができる訳です。

導入後は、タイムカードなどによる労働時間管理をおこなうことや、携帯電話で業務遂行に際し会社の指示を出すことはできません。

労働時間を”みなせる”理由として「客観的に労働時間の算定が困難」であると最高裁が判断した以上、適用した労働者の裁量により業務全般のタイムスケジュールを任せる必要があるからです。

阪急トラベルサポート裁判で、最高裁の判断が示されたことにより、今までみなし労働時間制を採ってきた多くの会社で労働時間管理が「客観的に算定に困難」であるかの検証が必要になってくることでしょう。

また労働者の就労実態によっては、みなし労働時間制から実態に即した労働時間制度へ変更する必要も出てくるはずです。
(2014年3月7日 A.M)

「契約更新時の空白期間があっても厚生年金保険・健康保険は変わらない」

「契約更新時の空白期間があっても厚生年金保険・健康保険は変わらない」

2014年1月17 日付けで日本年金機構事業管理部門担当理事宛に、厚生労働省保険局保険課長と同省年金局事業管理課長名で、「厚生年金保険及び健康保険の被保険者資格に係る雇用契約又は任用が数日空けて再度行われる場合の取扱いについて」という通達が出されました。…

どのような内容かをみるには、契約更新をする際に空白期間をおく背景を知っておく必要があります。

有期の労働契約・パート労働契約などで、労働者を連続して使用していると厚生年金保険や健康保険の被保険者資格を取得しなければならない必要があります。

しかし短期の雇用期間を結んでおいて期間満了が来たら契約更新を繰り返す際にわざわざ1日ないし数字の空白の期間を設けるということをする使用者がいます。

それは空白期間を置くことで、雇用契約の連続更新というかたちをつくらずにおくことで、雇用契約上、長年雇っている従業員を常に新規の採用したばかりの労働者とすることを目的としています。

通達はそうした現実の雇用契約更新において空白期間をおいて退職と新規採用を擬似する仕組みに、「就労の実態に照らして判断される場合には、被保険者資格を喪失させることなく取り扱う」という行政通達をだしたわけです。

これは契約と契約の間に1日ないし数日の契約のない空白期間をつくることに対して社会保険の取り扱いでは、連続して雇用される契約更新する労働者とみなしています。

しかし、空白期間を置くようなことをなぜわざわざするのでしょうか。空白期間をつくることによって雇い入れの日から雇用期間6ヶ月を超えないので有給休暇が発生しないこと、1年を超えないので雇い止め予告が不要となることなどが言われています。

通達の文書では、空白期間があっても厚生年金保険・健康保険の被保険者資格はそのままで取り扱うようにと明言しています。

本来は、雇用期間に関する社会保険の適用除外(厚生年金や健康保険に加入しなくてもいいということ)となるのは、社会保険の適用事業所に2か月以内の雇用期間を定めて雇用される者なのです。

2か月以内の雇用期間の場合は、フルタイムの労働時間働くパート労働者といえども社会保険の適用除外者となります。

期間雇用といえども通常の働き方なら多くが社会保険の適用があります。

これまではこうした空白期間を設定しているため、いちいち社会保険を喪失したり取得したりということを繰り返すことにつながります。

また、空白期間は原則的に国民年金や国民健康保険に加入する必要があるので、本当に空白期間に対して被保険者資格を喪失・取得を繰り返していた場合は、労働者側にも多くの手続きの負担がかかってきます。

このように、わずかな使用者側の都合から、社会保険にまで影響している実態がありました。

もうこのようなことをやめよというのが、上記の通達なのです。

(2014年3月7日 稲垣 真司)