心の病を患った労働者を解雇することは可能なのか?(事業主向け)

昨今、解雇規制緩和のニュースが世間を騒がせておりますが、実は労働基準法第20条で解雇は30日前に予告するか、また平均賃金30日分以上を支払うことで可能であると謳っています。
しかし、これでは労働者が使用者の恣意で解雇されてしまうことになりますから、労働契約法第16条で

解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

と釘を刺しています。
なぜ、釘を刺すと言う表現をしたかと言えば、労働契約法は労働基準法と違い、取締法ではありません。
労働契約法を犯しても刑事罰の対象とはなりません。
では労働基準法に従い解雇をしても構わないかと言えば、それは大きな間違えであり、被解雇者が解雇無効を争い労働審判の申立や裁判を起こせば、権利(解雇権)を濫用したとして無効であるという判断が示される可能性があるのです。

ここまで解雇について説明しましたが、では本題である労働者の病気(労務提供不能)による解雇は可能なのかについて話を進めます。

最近は、メンタル不全により長期間休職する労働者が増えています。その原因は様々ですが、仮にメンタル不全の原因が業務上の原因で発症したものだと労災認定されると、原則解雇はできません。
しかし、発症原因が業務外であるならば、解雇は可能です。
なぜでしょうか?
それは民法623条の条文が根拠となっています。

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

雇用契約において、労働者は労働に従事することを使用者に約して報酬を得ています。
病気により、労務の提供ができなければ、使用者は雇用契約を解除(要は解雇)することが可能なのです。
しかし、労働者が心の病を発症して直ちに解雇したとします。これは誰が見ても納得でき(客観的に合理的な理由)、一般常識として認められる(社会通念上相当であると認められる)ものでしょうか。

私は認められないと考えます。


労働者が精神障害等の疾患を発症した場合には、診断書の内容とできれば産業医の意見を参考にし、休養を与えることです。
そして休養から復帰したら、ある程度のリハビリ勤務で体を慣らし、産業医や主治医と相談して10割勤務に復帰させましょう。
しかし、長い間労務の提供が不可能ならば雇用契約の解除も仕方ないと考えます。
休養期間やリハビリ勤務の期間を就業規則(または細則)に定めておき、解雇回避義務を履行している根拠を明確にすることが重要です。
また、雇用契約の解除をおこなうにしても解雇にはせずに、自動退職や合意退職の流れになるような規程が、その後の労使紛争を回避するため必要なはずです。

就業規則等の不備により、労使双方が争いになることは、共に精神的にも金銭的にもダメージとなります。
就業規則の整備や会社に即した労務管理をおこなって、できれば労働安全衛生法を遵守しメンタル不全労働者を出さないようにしていきましょう。

(2014年6月12日 A.M)

労働契約書を取り交わしていますか?

例)Aさんはある小規模の事業所に勤めることになりましたが、特に労働契約書は交わしませんでした。

全部口頭の説明で簡単に働いた際の内容を聞いただけです。第一に働く期間はいつからいつまでかはっきりとわかりません。

業務についてAさんにはなんとなくイメージがありましたが、結局はっきりしませんでした。言われたことをまずは担当させられるようです。

時給額は募集要項からわかっていますが、昇給やどのような基準で他の同僚たちとの違いの差がつくられているのかはよくわかりません。

 

社会人となり働かなければいけないと考える人には、会社や店舗、多くの働く現場での募集要項に多くの注意を払っていると思います。

働こうと思う人は、電話したり履歴書を送ったりして面接など行い採用結果を待ちます。そして晴れて採用となった場合には、もちろん出社や店舗に出向いて一通りの説明を受けることになるでしょう。

そのときに、労働契約書は取り交わすことはしていますか?労働契約書といっても契約書を取り交わす行為です。この契約書を取り交わさないことがあればそれは労使双方にとってダメージがあると当会は考えています。

実は雇った方もよくわかっていないことがあります。雇用していることはもちろん付属する社会保険や労働保険、源泉徴収の手続きはなんとかやれているものの、それ以上に何かあった場合の労使の関係についてよく定められているわけではないという実態があります。

ぜひ、労働契約書を取り交わしているわけではないという覚えがある労働者の方、使用者の方がありましたら当会へご相談ください。

労働基準法第15条においては、労働契約を締結するに当たって、労働条件(賃金や労働時間など)を労働者に明示することを使用者に義務付けています。明示すべき労働条件の範囲は次のとおりです。  (2014年6月12日 稲垣眞司)

1、 必ず明示すべき事項

(1)労働契約の期間に関する事項

(2)就業の場所および従事すべき業務に関する事項

(3)始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに交替制勤務の場合における就業時転換に関する事項

(4)賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期に関する事項

(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む)

(6)昇給に関する事項

なお、(1)〜(5)については、文書にして労働者に交付しなければならないこととされています。

2、以下の 制度を設ける場合に明示すべき事項

(1)退職手当に関する事項

(2)賞与等および最低賃金額に関する事項

(3)労働者負担の食費、作業用品等に関する事項

(4)安全・衛生に関する事項

(5)職業訓練に関する事項

(6)災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項

(7)表彰・制裁に関する事項

(8)休職に関する事項